インタビュー


第22回メンタルトレーナー 高畑好秀先生 2008年10月27日


第22回独占インタビューはメンタルトレーナーの高畑好秀先生です。
先生はプロ野球選手、Jリーガーなど数多くのスポーツ選手のメンタルトレーニングの指導を行っています。そんな先生から、今回は高校球児に効果的なメンタルトレーニングを中心にお話をお伺いしました。オフシーズンはフィジカル強化と一緒にメンタルについても考えてはいかがでしょうか。


メンタルトレーナーになったきっかけ

「練習で習慣づいた事が試合にもでる。」

高畑先生(以下「高」) 私はもともと、メンタルが強かったわけではなく、小学校のころはみんなの前で、教科書を立って読んだだけで顔が真っ赤になってしまうほどでした。スポーツをやっているときでも、練習でできたことが試合で出せないなんてことが良くありましたね。
大学で早稲田大学人間科学部に入学して、どうせ勉強するんだったら自分が一番弱点としている部分を克服できたら大学行った意味があるのかなと思い、心理学のゼミを専攻しました。それがメンタルトレーナーになった大きなきっかけですかね。

スタッフ(以下「ス」) メンタルトレーナーになるための勉強は大学時代にされたということですか?

 いえいえ、確かに基礎は学びましたが、大学の勉強をしたからメンタルトレーナーになれるという訳ではなく、後の応用部分は自分の力で習得しました。

 何かメンタルトレーナーになるための必要な資格はあるのですか?

 もちろん心理学に関する資格などはありますが、資格とかスキルをどう活かせるのかはその人の人間性や感性などの問題ですよね。最近は、その資格やスキルを習得することに満足して、その後の人生に生かしきれていない人が意外と多いなあと思います。

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メンタルトレーナーをやっていて、やりがいを感じること

 他のビジネスの場合、白黒はっきり結果が決まるということはあまり無いじゃないですか。まあ、はっきり決まったとしても長い時間かかって決まることがほとんどですよね。
逆に、メンタルトレーナーの場合は、トレーニングによってすぐ白黒がはっきりして、効果があったか、なかったか実感できるわけですよ。だから、いい意味で日常生活ではなかなか体験できない緊張感は感じていますね。あと、一緒にトレーニングした選手が活躍しているのを見ると非常にうれしいし、選手を通して自分もドキドキできることはとても幸せなことではないでしょうか。

 やりがいはある反面、かなり根気のいる仕事ですよね?

 そうですね。メンタルトレーニングとは「心の教育」だと思っているんですよ。教育というのは字の通り、教えることと育てること。教えるというのは知識・スキルを教えること。それと同時に心を育てなくてはいけない。もちろん心を育てるほうが時間がかかります。いま学校教育の分野でも、知識・スキルは教えられても、心を育てられない指導者が多くなっているように感じます。

 それは高校野球でも言える話ですよね?

 まあ、できている先生もたくさんいますがね。でも、心を育てることはかなり時間のかかることですからね。

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雑用を無駄にするな

「自分で考えながら練習しよう。」
※写真は斉藤選手(早稲田大学)

 高畑先生著『打たれ強い自分をつくる方法』(中経出版)の中には、「雑用を無駄にするな」と書かれてありました。それは、先生の高校時代の経験からきたものでしょうか?

 経験から感じていることもありますが、どんなつまらないことも本気になってその道を探求していくと、本質にぶつかっていくわけですよ。本質にぶつかったら、またそれを違う形に発展させることができる。だから、雑用を雑用だと思ってこなしていると、絶対本質にはたどり着きません。どうせやるなら、雑用のプロと言われるぐらいまで突き詰めてやるべき。そうしたら、いままでは気がつかなかった事が見えてきます。例えば、うまい選手のグラブを磨いているときには、ここでボールを取っているんだとか発見があるだろうし、相手投手のマウンドの穴の掘れ具合から癖を見つけることもできるだろうし。すぐそこに生きた教材が転がっているのに、雑用だからといって何も考えていない選手って非常に多いですよね。

 そういうことを教えられる指導者や選手がいるところは、良いチームが多いのですか?

 だと思いますよ。ただ、監督に言われたからやるのではなく、自分から意識的にやることが必要ですね。例えばスタンドで応援していたとしても、1人ぐらいバックネット裏で配給パターンを読む選手がいてもいいと思いますけど。

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オフシーズンの気持ちの持ち方

 これからオフシーズンに入っていくわけですが、大会もない時期にどうやってモチベーションを高めていけばいいですか?

 モチベーションって高めないといけないものなのですか?だって好きなことやっているなら本来ならモチベーションを高める必要などないはず。そうでなかったら、モチベーションを高めなければいけなくなっているのはなぜなんだろうと考える必要がありますよね。その原因は、マンネリ化してたり、やらなきゃいけない義務になってたり、やらされるものになってたりするからだと思います。

 しかし、ずっと部活をやっていると楽しみが失われてしまうことがありますよね?

 子供の頃って日が暮れてもキャッチボールしてるでしょ。そんなに練習好きな子供がいつから楽しみが義務に変わってしまったのかという話ですよね。元々、子供は勉強好きなんですよ。これはなんて読むのとか、どうしてそうなるのとか親に聞くわけですよね。誰もが勉強好きなのですが、いつしか他人と比較され、いい成績・パフォーマンスのための勉強やスポーツになってしまっている。あるいは親や監督からやらされる勉強やスポーツになってしまっている。そのような事の積み重ねによって、本来の始めたときの楽しみを見失ってしまっていることが多いのではないのでしょうか。ですから、オフシーズンはもう一度原点に立ち返って、チームで楽しめることを考えてみたらいいと思います。私が監督なら、木の棒とゴムボールを使って子供たちに遊ばせるかもしれませんね。

 あるプロ野球選手がオフシーズン、ボールに触らないということもこれに近いのでは?

 そうですね。心はスポンジみたいなものですからね。水滴をたらすとスポンジは水でいっぱいになるし、いっぱいになったところに水滴たらしても溢れ出るだけですから。だからオフシーズンにはいっぱいになったスポンジを乾かして、水を吸いやすい状態にするということも大事ですね。

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プレッシャー対処法

「試合は試し合う場である。」
※写真は福井商VS坂田南

 ここではエラーをしてはいけない、ここではバントを決めなければならないなどプレッシャーのかかる場面ではどういった気持ちの持ち方が必要ですか?

 成功すること失敗することは1/2の確率。いい当たりでも野手の正面にいけばアウトだし、ぼてぼてのゴロでも抜ければヒットになる。結構野球って運に左右されている場面が多いですからね。やれることをしっかりやることが結果につながってくると思います。結果という不明確なことは考えないほうがいい。

 ポジティブ思考で挑めと?

 まあ、ポジティブというよりも、わからないことはいくら考えてもわからないので、そんなことを考えるよりかは、目の前にあることをしっかりこなすことが重要になってくると思いますけど。あとは、結果にとらわれすぎない。

 プロの世界だと特に結果が重視されますが。

 ある時期に打率が4割、またある時期には打率が2割というように成績が不安定な選手よりかは、どの時期も平均して2割7分とれている選手のほうが自分のバッティングがきちんとできているということだと思います。数字という結果以上にそれ以外の見えないところ(例えば安定感だったり相性だったり、あるいはそのときの運だったり)も監督は見て判断しなければいけないと思いますね。

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試合で100%のパフォーマンスをする

 高校野球の試合はトーナメントで行われるのがほとんど。この負けたら終わりの試合の中で、自分の100%のパフォーマンスを出すには、普段からどういったトレーニングが必要ですか?

 終わるときは終わります。考えてみたら、甲子園で優勝する一校以外はすべて試合で負けてしまうということ。負けることを恐れるのか、または負けることを楽しむ気持ちの余裕があるのかでは全然違います。簡単に甲子園の頂点に立てるような筋書きでは面白くないでしょう。負けるから楽しみがあるのです。負けることを恐れてやっていても、仕方がない。

 確かに、負ける可能性があってそこにチャレンジするからこそ楽しみが沸いてきますからね。

 そうです。負けるから楽しいのです。負けるから、どうやって勝つか考えるのです。考えることで新たな発想やアイデアが生まれてくるだろうし。だから、負けがあるということは、まだ自分が進化できる余地があるということだと思います。

 高校野球はプロ野球以上に試合が動くイメージがありますが、一度崩れたメンタルを立て直すことは難しいのですか?

 試合のときに立て直そうとしても無理でしょうね。日ごろの練習のときから、そういった状況を意識して取り組む必要があると思いますよ。例えば、バッティング練習でも1人30球も打つのではなくて、今日の練習は1球のみということにしたら集中力も上がるだろうし、プレッシャーに対処する練習にもなるわけですよね。

 練習以上のことを本番で発揮するのは難しいですもんね。

 練習以上のことというより、練習で習慣づいたことが試合で出ますからね。

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自分で考えることの大切さ

快くインタビューに応えて頂きました。

 自分で考えてやるという点では、自主練習が大切になってくるのではないでしょうか?

 やはり、自分で考えながら練習しないと、クリエーティブな野球はできないでしょう。

 日本の学校は自主練習の時間が少ないですよね?

 そう思いますね。指導者も選手を信頼しきれていないし、選手も自分自身を信頼できていない部分が大きいですからね。ありきたりなことを自主練習でやってもらっても困りますし。例えば、足が遅い人を速くさせるにはどうしたらいいでしょう。ただたくさん走ればいいのでしょうか。まず先に、原因を考えるべきです。どうやったら速く走れるかを自分で考えなければなりません。

 強い高校って自分たちで考えてプレーできますよね?

 (強い高校は)考えてプレーできる高校とがんがん叩き込んで強くなっていく高校の2つに分かれると思いますけど。だけど、考えてプレーできる高校は土壇場でも強いですよ。自分たちで課題も見つけられるし、簡単に修正もできる。

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高校球児に向けてのメッセージ

 試合というのは字のごとく、「試し合う」ことなんですよ。でも、多くの人たちは勝つか負けるかにしか目が向かないでしょ。勝敗だけなら勝って終わり、負けて残念、それだけですよね。だから、試合とはお互いのチームがいろいろなことを試し合う場であるのだということを意識してやってもらえたらうれしいですね。何か見つけた課題を試合で使えるまで仕上げていく。そこに、楽しみが生まれてくるはずです。失敗もあるし、いろいろ考えることができるから楽しいって思えるのではないでしょうか。楽しくなきゃ野球やっててもつまらないでしょ。

 お忙しいところ、どうもありがとうございました。

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プロフィール

高畑好秀先生
  • 生年月日:1968年
  • 出身地:広島県
  • 早稲田大学人間科学部スポーツ科学科スポーツ心理学専攻卒。
    日本心理学会認定心理士資格を取得。
    同大学運動心理学研修生終了の後、数多くのプロ野球、Jリーグ、Vリーグ、プロボクシング、プロゴルファーなどのプロスポーツ選手やオリンピック選手などのメンタルトレーニングの指導を行なう。

    日本コンディショニング&アスレチック協会公認スポーツ心理学講師
    富士アスレチックビジネス専門学校スポーツ心理学講師
    NPO法人コーチズのスポーツ医科学チームリーダー
    スポーツ総合サポートチームのMAPSのスポーツ医科学チームリーダーを務める。
    東京消防庁安全対策委員。

    スポーツメンタル、ビジネスメンタルに関する著書は60冊を超える。
    またテレビやラジオ(テレビ朝日、フジテレビ、TBS、NHK、東京FMなど)、様々な雑誌、講演(企業におけるビジネス講演や研修は400社を超える、他はオリンピック協会や各種の競技連盟、高校野球連盟、各県の体育協会などのスポーツ講演も行なう)などを通してメンタルトレーニングの普及に務めている。
高畑好秀先生

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